創設100周年を迎えた2016年に、資生堂クリエイティブは
「デザイン・リサーチ&ディベロップメント」に取り組み始めました。
この先の100年も、未来の化粧文化を作り続けていきたいと考え、
全体のテーマを「Crafting New Beauty」としています。
参加クリエイターは、自分の感性を出発点としながら、
他者との対話を通じてインサイトを深掘りし、
生活の中にある美しさの意味を再定義しようと試みています。
未来が美しい生活文化で溢れることを信じて、
このプロジェクトではこれからの世の中にインスピレーションを与える
豊かで美しい体験価値を創造しています。
個人の体調や気分によって最適な香りを噴霧するポータブルアロマディフューザー「BliScent」のプロトタイプを開発しました。インターネットの浸透により、在宅勤務や自宅で過ごす時間がこれまでよりも増えていくという社会的背景から、家の中に現れるさまざまなシーンに対応し、気分や行動を切り替えるために資生堂の香り知見が生かせるのではないかと考えました。
(2016/花原正基・長崎 佑香)
AIを活用したスマートミラー「Lia」のプロトタイプ(プロトタイプ時の名称:MiYu)では、未来のお客さまの生活を具体的に描き、ライフログデータやメンタルデータなどのパーソナルなデータがより蓄積していく社会を想定しました。そのデータを活用することで、お客さまの肌と心の状態を深く理解。さらに資生堂の美的感性と研究知見をもつAIをかけ合わせ、個々に寄り添い、美を一緒につくる未来を描きました。
(2017/花原正基・長崎 佑香)
「心地良さ」や「気持ち良さ」を感じる視覚と触覚表現だけが、ほんとうに肌にも精神にもよいことなのか。トゲトゲした触感やザラッとした触感、つまり私たちが日常生活の中でよく出合う自然な感覚を、スキンケアでも体験することが必要なのではないか。ユニークな視覚と触覚を組み合わせることで、コットンパフの新しい使い方が生まれ、ユーザーの印象や記憶に残る化粧体験を提供するアイデアを探りました。
(2018/長竹美咲)
スキンケア化粧品に五感を総合的にコーディネートする役割を持たせることで、より豊かな体験を作り出せるのではないかと考え、内容物の温度を変化させることができる容器兼デバイスを開発しました。その日の気温や湿度、ユーザーの肌状態から適した温度のスキンケアを提供することで、夏には冷たいジェルで肌のほてりを抑え、冬には温かいクリームでマッサージするようなスキンケアも可能となります。また、その温感をパッケージ上でもリアルタイムに表現する工夫で、内容物の温度やテクスチャーの状態を視覚的に伝え、スキンケアの感性体験をさらに高めることを目指しました。
(2018/駒井麻郎・長竹美咲)
電子たばこの原理を応用し、顔の周りを蒸気と香りで満たし、空気をプライベート化するデバイスです。心を落ち着かせ、集中力を高め、フィジカルとメンタルの両面に作用します。見た目にも機能的にも周囲に壁を作るのではなく、空気で一線を画すというアイデアは、日本庭園におかれる止め石のような、奥ゆかしいプライベートの作り方からヒントを得ました。薄い布が首に巻かれているようなフォルムで、布と布との隙間から蒸気が出てくるような印象を与えます。
(2018/駒井麻郎)
アロマコロジーの香りと腹式呼吸によるウェルネス体験の提案です。集中力アップ、リフレッシュ、ストレス緩和、禁酒補助、食事制限補助等の機能効果をもつ香りが詰まった小型ディフューザーを口にくわえ、自ら吐いた息で香りを放ち、それを取り入れることで、身体と周囲の空間とを循環する香りに満たされながら呼吸瞑想ができます。口にあたるパーツはひんやりとした触感を得られるよう大理石を採用。吸引防止弁と歯を乗せる溝を施し、自然に正しく使えるよう設計しました。
(2018/和久井裕史)
絵画を眺める。好きな音楽に聴き入る。沈む夕日を水平線まで見送る。そうした体験に似た、生活のふとした瞬間に我々が自然と行っている小さな瞑想体験をデザインできればと考えました。香りを含ませたプロペラ状のファンを回転させ、香りを拡散させます。有機的な動きを心地よく眺め、香りをほのかに感じ、視線と心をそこに集中できるよう、ファンは美しさを感じられる形状と動きを追求しました。加えてユーザーにとって彫刻作品を手に入れたような満足感も得られるよう、螺旋形状を基本に回したときも美しく見えるデザインを目指しました。
(2018/村岡明)
人が本質的に美しく生きるためには、潜在意識下にある好奇心を刺激する機会が必要ではないでしょうか。子どもたちが、自分の興味や関心を「動詞」で集め、未来を探求するワークショップを開発しました。ARに浮かぶ、職業名が記載された色玉に触れると動詞に分解。(例:野球選手→「世界で活躍する」「テレビに出る」「お金持ちになる」等)その中で興味のある動詞だけを選びます。自分だけの色(個性)のパレットを作ると、自分が想像もしなかった未来が浮かび上がります。「自分はこうありたい」という素朴な思いに気づき、自分で自分をデザインしていける子どもたちが増えることを願って制作しました。
2021年度キッズデザイン賞受賞。
(2019/髙田大資)