INTERVIEW

「美の体験」をデザインすることの魅力

長竹 美咲

2017 年入社アートディレクター・プロダクトデザイナー

入社を決めた理由は何ですか?

心から入社試験を楽しめた

国立大学の工学部でデザインを学んだ後、大学院でデザイン科学を専攻。その間にパリとニューヨークに留学し、プロダクトデザインとコミュニケーションデザインを学びました。ニューヨークでは現地の資生堂のインターン募集があったのですが、気になりつつもビザの関係で断念した経緯があります。帰国後、画一的な日本の就活にギャップを感じる中で、資生堂の入社試験だけは多様性が尊重され、やわらかいムード。ワークショップはユニークで自由度が高く、心から楽しむことができました。実は、総合職とデザイナー職のどちらで受けるか迷っていたのですが、大学の恩師から「絶対デザイナーがいい。チャレンジしてみなさい」と背中を押された結果、今の私がいます。入社試験では、自分が発見できていなかった強みを引き出していただけたので、これから受ける方にもぜひ臆せず挑戦してほしいです。

憧れだった資生堂のデザイン

資生堂のデザインは、デザインを学ぶ学生なら誰もが知っているほど有名です。私も、資生堂パーラーのパッケージデザインや『花椿』のアートディレクションを手がけたグラフィックデザイナーの仲條正義さんに憧れがあり、学生時代に古書店で昔の『花椿』を買ったり、新しい号が出たら店頭にもらいに行ったりしていました。ほかにも、資生堂の美の変遷をまとめた大型本や、資生堂のパッケージデザインを特集した雑誌などが家の本棚にあったことに入社してから気付き、我ながらびっくり。知らず知らずのうちに資生堂のデザインの力に惹かれていたのだと思います。

仲條正義による資生堂パーラーのパッケージ

仕事内容とやりがいについて教えてください

1年目から限定品のクリエイションに参加

現在は、グローバルブランドSHISEIDOで若年層向けの限定メーキャップライン「PICO」や、サステナブルなスキンケアライン「WASO」などのプロダクトデザインを手掛けています。なかでも「PICO」シリーズは2018年の第1弾から今年の第4弾まで、ずっと担当している思い入れのある商品。第1弾は入社して3週間後にアサインされ、手探り状態でギフトパッケージをデザインしました。発売時は表参道にポップアップストアが出たり、SNSが盛り上がったり、華やかなイベントが目白押し。自分がつくったものが自分の手から離れて世の中に広がっていく初めての経験は、やりがいというより驚きでした。

「PICO」シリーズ AD 駒井 麻郎 D 長竹 美咲

ストーリーから「美の体験」をデザイン

資生堂のデザイナーとしてのやりがいは、見た目だけとらわれず、より広義のデザインができるところだと感じています。社内ではプロダクトデザイナーを信頼していただけているので、マーケティング主導のアイデアをただ形にするのではなく、どんなストーリーでつくれば魅力的なものになるか、どんな素材を使ったらいいか、どんなカラークリエイションがいいかということを一緒に考えて、「美の体験」そのものをデザインしていけるのが良いところだと思います。

資生堂らしさはデザイナーに染み込んでいる

デザインで意識しているのは、単にきれいなものをつくるのでなく、いかにオリジナリティを出すかということ。資生堂らしい、他とは違う革新性のあるデザインを心がけています。クリエイティブの中で、「資生堂らしさ」を議論することもありますが、よく言われるのが、それは私たちデザイナーの中に染み込んでいるということ。その一例が100年以上前から受け継がれる独自の「資生堂書体」。デザイナーやコピーライターは全員、この美しくエレガントな手書きの文字を1年から2年かけて習得します。私たちがデザインをすることで自ずと資生堂らしさは出てくる。そんなふうに考えています。

新入社員時代に製作した資生堂書体

働く環境や周りの方々との関わりについて教えてください

クリエイター同士の会話ができる

上下の関係なく、クリエイター同士の会話がフランクにできる環境です。私が何かをつくっていれば「それ何?」と話しかけられますし、誰かが気になるものをつくっていれば、私から「それ何ですか?」と話しかけます。コロナ禍を機に在宅勤務が増えましたが、電話が少ないのはいいですね。従来は作業の手を止めることもありましたが、今は主にチャットでコミュニケーションができるので、お互いの時間を拘束せず、便利です。ただし、オフィスにいたときのようなちょっとした進行確認や情報共有がしづらいので、自分から能動的に報告・連絡・相談をするようにしています。

メンバーとの打ち合わせの様子

今後の目標について教えてください

ART & SCIENCEの実現に貢献

プロダクトデザインは生産に関わる技術的な制約も多く、専門性の高い領域なので、もっと知識を増やしてスキルを高めていきたいです。それと並行して領域外の仕事に挑戦することで、商品を使う前から使い終わった後まで、商品まわりのすべての体験をデザインできる人材になりたいと思っています。 また、デザイン科学を学んだバックグラウンドを生かし、アートとサイエンスをつなぐ役割をしていけたらと思います。そのために今、デザイン業務とは別に、資生堂の研究所や大学の研究者と一緒に「世の中にこんなものがあったらいいな」という新しい価値を開発する仕事もしています。